なはーとベイビーシアタープロジェクトレポート
2025年度「みんなのかたち モーイモーイあしびー」②

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2025年度「みんなのかたち モーイモーイあしびー」②

Columnコラム

なはーとベイビーシアタープロジェクトレポート
2025年度「みんなのかたち モーイモーイあしびー」2回目


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実施日:2025年11月1日(土)
時間:9:40~11:40 ワークショップ
   11:40~13:00 ごろ ゆんたくじかん
会場:那覇文化芸術劇場なはーと 1 階小スタジオ
アーティスト:平良亜弥、津波博美
造形:山内 盛彰
音楽:古謝 麻耶子
ワークショップ概要
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なはーとでは、アートを通してあかちゃんとおとなの新しい関わり方を発見する「ベイビーシアター・コミュニティプロジェクト」を昨年から継続して開催しています。
0歳~2歳のあかちゃんと、あかちゃんに関わるすべてのおとなたちが、お互いに心地よく影響し合える空間を、時間をかけてつくっていきます。

「みんなのかたち モーイモーイあしびー」

全4回のワークショップを通して、みんなで素材や音、動き、 つながりを育みながら「ベイビーシアター※」をつくります。あかちゃんと過ごす日々の風景が、アーティストの遊び心で新しい世界へと変身!
※ベイビーシアターとは、あかちゃんとおとながともに参加し体験する、新しい舞台芸術です。

色や光、音を五感で味わうセロハンあそび

全4回の連続ワークショップ、今回は2回目の開催日です。
1週間ぶりの再会とあって、アーティストや参加者同士なんとなく顔が分かるようになり、「こんにちはー」と和やかな雰囲気でワークショップがスタートしました。

まずはまあるく円になって、カラーセロハンであそびます。

セロハンを顔の前にかざして視界の色が変わるのを楽しんだり、くしゃくしゃと丸めて感触や音を確かめたり。つなぎ合わせた大きなセロハンをすっぽりとかぶって、中でどんなおしゃべりをしているのでしょうか?

一方で、セロハンはいや!とばかりに保護者が差し出すセロハンを押しのけたり、みんなの輪の中心で走り回ることに夢中なあかちゃんもいます。
“今はこれをやりましょう”といった制約がない、あかちゃんのための自由なワークショップ。みんな、気持ちのおもむくままに過ごします。

麻耶子さんが奏でる鉄製の打楽器のやさしい音が響きはじめたら、こんどは大きなセロハンを使ったあそびへと移行します。
フロアに敷かれた大きなセロハンがザワザワと揺れ、まるで大海原のよう。どんな感触かな?と、さっそくその上を歩いて確かめます。

こんどは大きなセロハンが上へふわり、下へふわり。おおきな波のうねりのような動きに。
これまでセロハンあそびに参加せず遠巻きに見ていたあかちゃんが、ちょっと興味を持った様子で少しずつ近づいてくる様子もみられました。

おおきなセロハンをくしゃくしゃにしてみよう


みんなでセロハンのまわりを囲み、中心に向かってくしゃくしゃと縮めていきます。広げて、縮めて、くりかえし。全身を使って音や感触を共有すること、まわりのおとなたちの表情やからだの使い方を見ることもまた、あかちゃんにとって普段はなかなかできない体験です。

少しずつ会場の照明が落とされ、前半のワークを締めくくるクールダウンの時間へ。

ゆらゆら、ざわざわ。フロアに横たわった参加者の上を大きなセロハンの波がたゆたいます。
セロハンの動きをじっと見つめるあかちゃんや、保護者の胸に顔をうずめ眠ってしまいそうなあかちゃんも。

静かで心地よい音に満たされた空間をたっぷり味わって、前半のワークは終了です。

ひとつひとつの素材をじっくり観察してみよう

休憩時間を挟み、後半のワークがはじまりました。
ひと組にひとつずつ配られた素材セットをひろげ、布のひもで作った円形の枠の中に親子で入り、素材をひとつひとつたしかめていきます。
カラフルなひもやメッシュの布、カラー手袋、鈴、たまご型のマラカス。
さわったり、振ってみたり。ものによって異なる手触りや重さ、音をじっくり味わいます。

次に、ひもで作った円をフレームに見立て、手元の素材でその中に思い思いの作品を描いていきます。
お気に入りの色、素材、並べ方。同じものはふたつとない、個性豊かな作品がフロアいっぱいに並びました。

「みなさん、こんどは素材を身に付けて変身してみましょう」と、亜弥さん。

はじめは、どうやったらいいんだろう?と困惑していた参加者たちですが、アーティストやサポートスタッフのリードで、ひもや布をからだに巻き付けて大胆に変身していきます。
“いつもと違う” ことが気に入らないのか、ムッとした表情で布やひもをすぐに外してしまうあかちゃんに、思わず保護者が苦笑いするシーンもありました。

変身タイムのあいだにフロアに現れたのはカラフルな「花道」。
なんと、これから始まるのはファッションショーです!
照れや恥ずかしさを取っ払った先に見えるもの
まずはみんなで円になり、ランウェイでみんなに呼んでほしいニックネームとポーズをコール&レスポンス。
「もう既に十分恥ずかしい格好をしてるので、これ以上恥ずかしいことはないです。思いきり楽しみましょう!」という亜弥さんのことばに、参加者のあいだに笑いが起こりました。

音楽隊による愉快な演奏にのせて、参加者とアーティスト、サポートスタッフが一緒に花道の先にある大きな鏡に向かってランウェイ!

花道の中間まで歩いたらポーズを決め、さきほどみんなで共有したニックネームをコール&レスポンス。「いいね!」「かわいい!」みんなで声を出しあい、拍手やマラカス、音楽隊の演奏でショーを盛り上げます。

最初はすこし照れくさそうだった参加者たちも、やっていくうちにどんどん声や動きが大きくなってくるからふしぎです。あかちゃんたちもそんなおとなたちを見て大興奮。保護者に抱っこされてくるくる回り、この日いちばんの笑顔を見せてくれた子もいました。

ファッションショーはいつしかカーニバルのようになり、会場全体をぐるぐる練り歩きます。通りに面した大きな窓の外からは、「なにをやっているんだろう?」と中をのぞきこむ人たちも。
あかちゃんも、おとなも、スタッフも、このふしぎでにぎやかな時間と空間をたっぷりと楽しみました。

普段はやらない・できないようなことでも、あかちゃんと一緒なら・みんなと一緒ならできる。そんな貴重な体験となりました。

さあ、そろそろ今回のワークショップもおしまいの時間です。
花道に沿って座った参加者たちの上をメッシュの大きな布がふわりと通り過ぎ、やわらかな風と色、マラカスや鈴の音色が、みんなの心とからだを少しずつクールダウンさせていきました。

さいごは、毎回恒例の感想シェアタイムです。

「最初はちょっと泣いていたんですが、2回目とあって場慣れするのも早く、最終的には笑顔も出てきたのでよかったです」
「人がたくさんいる中で楽しむことに、少しずつ慣れてきたように感じます」
「おとなになってなかなか無い、たぶんこの先も無いであろうランウェイを体験できてよかったです」
「最初は正直、ランウェイは嫌だなぁと思っていました。でも音楽や歓声で盛り上げてくれたので、やってみたら意外と楽しかったです」

参加者からの感想を受け、
「この場でみんなから感想を聞けるのが、いちばんうれしい時間です」と亜弥さん。
「次の3回目のワークショップは、うまくいくか実は私もドキドキしています(笑)みんなで助けてくださいね!」と締めくくりました。

回を重ねるごとに、アーティストと参加者という一方通行の関係性ではなく、「ベイビーシアター」を作り上げるひとつのチームとして動き出した、そんな雰囲気を感じました。

「みんなのかたち モーイモーイあしびー」第3回目のレポートも、どうぞお楽しみに!


撮影・執筆:安田 麻衣子
 

最終更新日:2025.12.11