なはーとベイビーシアタープロジェクトレポート
2025年度「みんなのかたち モーイモーイあしびー」3回目

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実施日:2025年11月8日(土)
時間:9:40~11:40 ワークショップ
11:40~13:00 ごろ ゆんたくじかん
会場:那覇文化芸術劇場なはーと 1 階小スタジオ
アーティスト:平良亜弥、津波博美、山内 盛彰、古謝 麻耶子
サポートアーティスト:岩木 桃子
ワークショップ概要
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なはーとでは、アートを通してあかちゃんとおとなの新しい関わり方を発見する「ベイビーシアター・コミュニティプロジェクト」を昨年から継続して開催しています。
0歳~2歳のあかちゃんと、あかちゃんに関わるすべてのおとなたちが、お互いに心地よく影響し合える空間を、時間をかけてつくっていきます。
「みんなのかたち モーイモーイあしびー」
全4回のワークショップを通して、みんなで素材や音、動き、 つながりを育みながら「ベイビーシアター※」をつくります。あかちゃんと過ごす日々の風景が、アーティストの遊び心で新しい世界へと変身!
※ベイビーシアターとは、あかちゃんとおとながともに参加し体験する、新しい舞台芸術です。
音に集中して、あかちゃんの世界に心を寄せる
全4回の連続ワークショップ、3回目の開催日です。
まず前半は聴覚をつかったワーク、後半は全感覚で楽しむワークが行われます。
「あかちゃんはおとなよりも聴覚が優れているといわれています。目がまだあまり見えていないのに、音が聞こえる世界や感覚というものに心を寄せて体験してみてください」と麻耶子さん。

参加者たちは、木の実をちいさなペットボトルに入れたベビーマラカスやたまご型のマラカス、ハンドベルなどを手に持ち音を鳴らします。一心不乱に楽器を振って音を楽しむあかちゃんや、好きな色の楽器に交換しようと交渉するあかちゃんもいて、それぞれのこだわりや楽しみ方が垣間見えました。

保護者たちはファミリーサポートやスタッフの手を借りつつ、目を閉じたり寝転がったりしてあかちゃんたちは音がどんなふうに聞こえているのか想像してみます。楽器を持って音を鳴らす人、集中して音を聞く人、2つのグループに分かれ、交代しながら“音”に集中します。
カラフルなメッシュの布が、ひらり、ひらりと会場内を舞いはじめました。こんどは布が自分に近づいてきたときだけ楽器を鳴らすワークに挑戦です。目を閉じて、布を持つ人の足音や布のこすれる音、空気の動きを感じ取ります。

音が大好きというあかちゃんは以前も行ったこのワークをよく覚えていて、タイミングよくしっかり音を鳴らすことができていました。
ここで、「みなさん、魔法の呪文を覚えていますか?」と亜弥さん。
1回目のワークショップで共有した魔法の呪文、「まーるまーるぼーん!」とみんなで声を合わせて何度も唱えます。すると会場の後ろのほうからみんなでシールを貼ってカラフルに装飾した大きなビーチボールが登場しました。

よちよち、てくてくのあかちゃんたちはボールにかけ寄り、転がしたりさわったり、ボールに顔をくっつけて向こう側をのぞいたり。夢中でボールを追いかけます。
この日は朝からずっとご機嫌ななめでみんなの様子を遠巻きに見ていたあかちゃんも、ボールが登場すると思わずうずうず。スタッフがボールを近づけると、やめてよ〜、とばかりに足で蹴り返しながらも思わず笑顔がこぼれていました。
全身で感じる、音と光、色とりどりの世界
休憩を挟んで、後半がスタートしました。
窓には暗幕がひかれ、前半とはうってかわって暗い空間に。なかには「こわい」と言ってお部屋から出たがるあかちゃんもいて、暗闇がこわいという感覚がすでにそなわっていることに驚きました。それぞれ、無理のない範囲で参加します。

天井からぶら下げられた大きなカラーセロハンのカーテンに、照明の光が透過してカラフルな影が映ります。カラーセロハンの動きにあわせてゆらめく影をさわったり、ガサガサという音に耳をかたむけてみたり。

白いスクリーンの裏側から、懐中電灯の光をホタルのように明滅させたり、ザルと懐中電灯を使ってクモの巣のようなふしぎな影を映したり。

さらに照明が落とされ、光と影、静かな演奏の音、あかちゃんの声がふしぎな一体感をもって会場を満たします。その様子をすこし離れて眺めてみると、まるで深海をのぞいているかのよう。

視覚・聴覚・触覚をたくさん使ったあかちゃんたち。暗闇の効果も手伝ってか、後半のワークショップが終わる頃にはすやすや眠ってしまった子がいつもより多く、しあわせそうな寝顔に、見ているこちらもしあわせな気持ちになりました。
さいごはみんなで円になって座り、感想をシェアします。
「3回目とあって、これまでよりも子どもが自分を開放した感じがあってよかったです」
「暗いなかでは、この子は影よりも光のほうに強く反応しているようすでした。キャッキャと声を出して笑っていたので、楽しかったんだろうなと思います」
「ちょっと遠くから見ていたら水族館の深海エリアみたいで、子どももそれが心地よかったのか徐々に目を閉じて眠ってしまいました」
ワークショップの回数を重ね、場慣れ、人慣れしてきたあかちゃんたち。
次はいよいよ、さいごの「おひろめ会」です!
次回のレポートもどうぞお楽しみに。
撮影・執筆:安田 麻衣子